意味の無いただの文字の羅列が続いてしまった。
私はグラスを手首で回しながら突然言った。
「私さぁ、多分、多分なんだけど人間になりたいだよね。」
隣にいた彼は不思議そうな顔をしていた。
そりゃそうだろう。なんの前触れもなく、人間である私が人間になりたいと言い出したのだから。
回したグラスの中ではグラス中のお酒がゆっくりと揺れていた。
私は人間になりたい。その気持ちは前からあった。
まるで私は人間のようで人間でなく人間にそっくりな何か何じゃないだろうか、そんな風に気が付けば感じるようになってた。ずっと思い続けてたと言うよりも時折感じていた。そんな中で人間になりたい、そんな気持ちが何となく出てくるようになった。
この気持ちは私の中でも多分程度の気持ちである。多分程度の気持ちであったけれど誰かに聞いて欲しかった。ただ、聞いてもらうだけでよかった。だから、私は突然、彼に聞こえるようにこんなことを言ったのだろう。
彼は今、何を思っているのだろう。きっと私の言ってた意味が分からずに何を言っているんだ?と思っているんだろうな。だけど、それでいい。それでいいのだ。
聞いてもらえた。それだけで私は十分なのだから。
──────────────
彼女と私は別の人間